対談

2026.01.07

対談:小森たくお×馳 浩

石川県の復旧復興と創造的未来

小森 馳知事、本日はよろしくお願いします。事になられてからの4年間を振り返って、率直にいかがでしたか。

  こちらこそよろしくお願いします。この4年間は、とにかく自然災害と向き合い続け、それを克服していく復旧・復興の毎日でした。同時に、初めて行政のトップとして県政を担う立場になり、副知事はじめ県職員の皆さんと日々議論しながら、「次に何をすべきか」を常に考え続けてきました。毎日ランチミーティングをして、総務や企画から、土木や農林に至るまで、各部を横断しながらその時々の課題に向き合っています。その中でも、商工労働部とは能登のなりわい再建、ものづくり産業の現場での人材不足の問題、健康福祉部とは奥能登公立4病院の機能強化の話など、とても大きな課題ですのでよく話します。

また、私は国会議員の時にマンガ議連をやっていたこともあり、マンガやアニメを含む県の文化的なコンテンツ産業に力を入れようと、経産省から県に派遣されている産業政策課長とも議論を重ねています。他にも、虐待の事案、高齢者福祉、乳幼児・子育て支援など、県政には幅広い課題があります。知事就任以降、様々な分野において、柔軟な視点を入れて取り組んできました。

 

【加賀料理が無形文化財登録へコンテンツとしての食文化】

小森 石川県の魅力発信としては、加賀料理の無形文化財登録が本当に明るいニュースでした。

  これは、全国で初めて、令和5年に部局横断で「食文化推進本部」を立ち上げたところから始まりました。食文化は、食材の生産者はもとより、料理人、観光や文化面など、多方面での連携やネットワークが必要です。そして、徳田副知事をチーフとして各部署からアイディアを出しあい進めていく中で、加賀料理を無形文化財に登録することを目指したのです。

京料理は公家料理、加賀料理は武家料理ですから、歴史的観点からも登録無形文化財は是非達成しようと考えました。そこで「加賀料理とは何か」という定義づけから着手しました。

・加賀料理の定義づけをしよう

・技術を守ろう

・人を育てよう、料理人を育てよう

・加賀料理を総合芸術にしよう

・観光産業として強くしよう

これら5つを柱に進め、加賀料理の技術保存と継承を目的とした「加賀料理技術保存会」も立ち上げました。その結果、令和7年10月に文化審議会から答申が出て、12月には正式登録されました。料理の分野における無形文化財としては、京料理に次いで2例目です。

  もう一つ、加賀料理に欠かせないのは何でしょう?

小森 何でしょう、器とか?

  お酒(日本酒)ですよ。お酒は、加賀料理の歴史と文化に深く根ざした、不可欠な要素と言えます。こうした中で、私のもう一つの狙いは、お酒に限りませんが、石川県から食の人間国宝を出したいということです。これまでは「工芸」、「伝統技術」といった芸術的分野で人間国宝は認定されてきました。でもちょっと待ってください。食に関わる技術、それを伝えてきた我が国固有の風土、そこに生きる人間、その総合芸術が、食に関わる方々だと私は思っています。これまで人間国宝のジャンルには、生活文化としての「食」がなかったので、料理人や寿司職人、日本四大杜氏と言われている能登杜氏の中からぜひ人間国宝を出したいと思って、文化庁にも強く働きかけていきました。

そして、遂に、先般の加賀料理の答申の際、基準を約50年ぶりに改正し、新たに「生活文化」(食文化など)というカテゴリーを設ける、とされました。そうなると私は、石川県から第1号を出したいと思っています。大の里じゃないですが、「唯一無二」の技術を持っている人。それはやはり伝承していくべき石川県の固有の文化、人間の技として整ってきている。

最近はデジタルアーカイブの映像でその動作を解析することで、似たようなものが造れることものあるのかもしれません。それはそれとして近代的な科学技術の力で分析すればいいのですが、やっぱり食に対する愛情や、お客様に対する敬意とか、そういうことが含まれてはじめて「食の人間国宝」だと思うんですね。

地方文化の集合体が我が国の文化であると思いますので、地方創生の一つの魅力として、ぜひ総務省からも文化庁に強く働きかけていただきたいと思っています。

 

【コンテンツ産業のポテンシャル強いネットワークで石川を盛り上げる】

小森 最近、永田町、霞が関でもコンテンツ産業が注目されています。経済対策にも大きく盛り込まれました。経済産業省やほかの省庁を含めて500億を超える補正予算がつきました。でも、まだ通過点というか、今がブレイクのし始めです。2年ほど前のAIがこんな感じだったな、と覚えています。その後一気に大きく伸びました。コンテンツ産業もまさに、これから伸びていくところですね。

  実は、2年前から「アニメ・スタいしかわ」というアニメ文化を盛り上げるイベントに取り組んでいます。漫画議連の事務局長をしていた経験もあり、アニメ・漫画・ゲームで石川を盛り上げたいと思ってきました。韓国勢に押されている現状もありますが、日本発のコンテンツにはまだ大きな可能性がある。「花咲くいろは」や「君は放課後インソムニア」など、石川が舞台の作品も多い。ロケ地としても魅力があり、北陸三県で映画・アニメの拠点化を進めたいと考えています。

星稜高校の先輩でもある()ブシロードの社長、木谷高明さんの協力で「アニメ・スタいしかわ」を開催しました。声優さんを呼んだり、アニメファン垂涎のコンテンツやステージを揃えたり、「いしかわアニメアワード」というコンテストも実施しています。その他、アニメ制作会社や「Zepp金沢」の誘致にもつながり、若者文化、コンテンツ文化の全国のトレンドに乗ることで、インバウンドに対しても夜の楽しみ、エンタテイメントを提供することで大きな追い風になると考えています。もともと、その磁力はあるところなので、過去の伝統芸能を大切にしながら、新たなモノを提供していく工夫が私たちの世代の一つの責任かなと思っています。

 

【北陸の未来をつくる産業クラスター 半導体、炭素繊維、そして人材】

小森 この4年間、とりわけ能登の震災対応が非常に重い課題で、馳知事の20年を超える国会議員としてのキャリアが培った人脈を通して、皆様が石川県のために尽力してくださいました。過去の他県では叶わなかったことも、能登のためにできたことがたくさんあります。一方、これからの4年間でどのような県政のかじ取りを行っていくのかをお聞きしたいと思います。

これからの大きなテーマは「産業クラスター」だと思っています。国は今回、AIや半導体など17の重点投資分野を示し、地方に新たな産業集積をつくる流れが加速しています。北陸、石川もこのトレンドに乗らなければなりません。

  3年前、当時の西垣副知事に「石川県って宝の山ですよね」と言われたことがあります。「私は中小企業庁の担当課長もしていたのでわかっていたはずですが、これほどすごいとは思わなかった」と。代表的な産業は繊維ですが、現在金沢工大を拠点として、炭素繊維のクラスターが素材開発をし、飛行機や車体など実用化が進んでいます。繊維産業の技術を転用して発展させるという石川ならではの強みです。

半導体も同じです。これも、令和5年から金沢工大が、半導体人材育成に関して、学生向けの専門講義や産学連携プロジェクトを具体化させていきました。世界シェアを持つ企業も石川県内にありますが、鍵は「人材」です。県内には金沢大学、金沢工大、JAISTという高等教育機関がある。彼らの基礎的な研究、応用を実用化までつなげるための取りまとめは、私たち行政の仕事だと思っています。学術研究とともに商品開発し、新たな分野でオンリーワンを目指していくためにはどうしても人材が必要なのです。しかし、石川県でこの分野を学んだ学生の85%が県外に就職しまう。これは北陸三県で連携して取り組むのが良いと思うのですが、企業との接点づくりやインターン、生活面での利便性など、地域の魅力発信がさらに必要だと思っています。今や情報通信が発達していますから、本社は東京にあり、働く場所が金沢であっても全く問題ありません。こういう働き方改革を含めて、魅力ある地域で世界最先端の産業に携わることができる環境を作っていきたい。

小森 各大学が持っているシーズをきちんと産業につなげていくこと、経産省のディープテック・スタートアップ支援事業が、石川県がもともと持っている力を産業の集積につなげる鍵の一つですね。金沢大学は先日インキュベーション施設を作りましたが、ぜひ大学発のスタートアップのエコシステムを、県も一緒に支援してほしいと思います。技術だけではなく特許を取る、あるいは経営面なども含めて。

  県としてもスタートアップのビジネスプランコンテストをやっていますが、なんと1位の賞金はいくらだと思いますか?

小森 100万円?

  石川県のスタートアップ・ビジネスプランコンテストは、最優秀起業家には、事業資金として最大600万円ですよ。優秀起業家にも最大200万円ですよ。思い切った投資ですが、大切なことです。石川県には安定的な電力と豊富な水があります。それはひとつの資産でありファンダメンタルがしっかりしているといえる。人材も全国から優秀な若者が集まって研究している。産業クラスターの集積地として一大拠点となりうるポテンシャルを持っています。そこで工業団地用の土地不足の課題ですが、例えば、金沢外環状道路海側幹線の周辺は、県・市の枠を超えて国と連携して用途変更を進めるべきだと考えています。小森先生のリーダーシップをお願いしたいと思います。

小森 基盤を作るのが行政、政治の仕事なので、これから進出してくる企業のための土地を用意することは国・県・市連携でやっていくべきだと思います。産業クラスターを石川県でも作りましょう。馳知事が築かれた北経連の人脈、三県知事の連携によって未来が見えますね。

  令和4年には中小企業庁と全国で初めて連携協定を締結して、県内の99.8%の中小小規模事業者を支えるための伴走型支援をしっかり行っています。例えば、石川県独自の予算で商工会や商工会議所の経営指導員の増員を進めていて、すでに9名を配置しています。

 

【県産業展示館の再整備と消防学校移転 次の50年に向けた基盤づくり】

小森 関連する話でいうと、例えば足りてないものの一つに、展示場があります。産業展示館はありますが、その規模が十分ではありません。それで馳知事は西部緑地公園の再開発を掲げていましたが、能登半島地震の後中断、足踏みしていました。それがいよいよ、新たに動かしていただけることになりました。

 知事を拝命して以来取り組んできた西部緑地公園の再整備ですが、震災を機に一時中断していました。県のエネルギーは能登の復旧・復興へ注ぎ込みましたが、このことは県民の皆さんもご理解いただきたいと思います。昭和48年、日本海博を機に建った産業展示館も50年の時を経て再整備せざるを得ません。そして、いよいよ来年度(令和 8年度)から、再整備に向けて具体的な基本計画を策定していきたいと考えています。

整備にあたっては、巨額の事業費が見込まれますので、一括整備ではなく優先順位をつけた段階的整備とせざるを得ないと考えています。まずは、産業展示館(13号館)の建て替えで、成長戦略の拠点として最優先ではないかと思います。次いで、県立野球場の建て替え。そして、公園全体の再配置やアーバンスポーツ施設の導入です。

今後も復旧・復興の財政負担は続きますが、石川県の成長の礎となる基盤整備は着実に進めていく必要がありますので、しっかり進めていきたいと思います。

小森 馳知事のリーダーシップでぜひガツンと打ち出していただきたいですね。みんなが同じ方向を向きながら前を向けるように。それから、農業公園用地(金沢市二日市町)はどうなりますでしょうか。

  消防学校の移転候補地ですが、能登半島地震で深刻な液状化被害が内灘やかほく市など周辺で発生しましたので、あそこで消防学校を建設するには液状化対策が必要となります。そのための地盤対策には約40億円の追加費用が必要と試算されています。一方で、石川県の中心で北陸自動車道や国道8号に近く、いざという時は富山・福井にも迅速に対応できますし、能登への移動という観点でも利便性が高い場所です。また、能登半島地震の際には、産業展示館は物資の仕分け拠点となり、いしかわ総合スポーツセンターは1.5次避難所の機能を担いましたが、これらのエリアに近いという点も強みだと思います。そのようなことを総合的に考慮して、消防学校を整備するに最適な場所を検討し、判断したいと思っています。

小森 私自身、高市内閣で経済産業・内閣府・復興政務官を拝命しました。その中では経済産業大臣政務官がベースです。経済産業省は、副大臣が2人、政務官が2人いますが、分野別の担当になっていないので、基本的には全部の分野をやる、ということになっています。ですので、コンテンツも、産業クラスターも、中小企業支援も、AIも、すべて幅広く石川の強みをこれまで以上に後押ししたいと考えています。

 ありがとうございます。石川県の全体の成長に向けて、炭素繊維や半導体などの強みを生かしつつ、産業人材を送り込む体制を整えていきます。ぜひ国としても引き続きご指導をお願いいたします。

小森 馳知事としっかりタッグを組んでいきましょう。本日はありがとうございました。

  はい、ありがとうございました。

馳 浩はせ ひろし

昭和36年5月5日生まれ。 金沢市立千坂小学校・鳴和中学校・星稜高等学校・専修大学卒業。 星稜高校国語科教諭・オリンピック選手(レスリング)・プロレスラーを経て、参議院議員・衆議院議員など国会議員在職約27年。第16代文部科学大臣・自民党政調会長筆頭代理などを歴任。 1995年7月、第17回参議院議員通常選挙 石川県選挙区より自民党の推薦を受け出馬し、現職候補との激しい選挙戦の末初当選。後に自民党入党。2015年10月、第3次安倍改造内閣において文部科学大臣・教育再生担当大臣に就任。2017年4月より自民党石川県支部連合会会長、同年8月より自民党教育再生実行本部長に就任。2017年10月、衆議院小選挙区選出議員選挙において石川1区で7度目の当選。2021年10月の任期満了を経て、ふるさと石川県の新時代を切り拓くため、2022年3月に石川県知事選挙に立候補し、196,432票で初当選。

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