対談

2025.04.08

対談:小森たくお×小林 鷹之

小林鷹之衆議院議員の講演を受けて 対談日:令和7年3月

小森  小林先生、どうもありがとうございました。
今日は小林先生に教育、外交、安全保障、科学技術など多岐にわたるお話をしていただきました。それ以外にも、税や社会保障にも知見があるので、小林先生はまさにオールラウンダーだな、本当に何でも出来る方だなと改めて思いました。本当にありがとうございました。

先ほど、大蔵省理財局時代のお話がありました。私が係長で、小林先生の一級上で現在の経済産業省担当の主計官が小林先生のお兄さん役で、私がそのさらに後見役ということでやっていました。仮眠室のお話がありましたが、大蔵省(財務省)の建物ってすごく古いんですよね。そこの地下の薄暗い、じめーっとした所にあって、口の悪い人に言わせると「霊安室」と言われていましたし、また自虐的に「ホテル大蔵」とも言われていました。(笑)

講演の中で、場当たり的に大事なことが決められてしまっていいのか、という危機感を語っていただきました。私も同じことについて、色々なところで話をしています。今の山を乗り越えるためだけに、短期間のディールでかなり重要な意思決定がされてしまうので、中長期的に見た日本の国益にベストフィットした解が出て来るわけではないと思います。どこかでこの在り方を改めなければいけない。12月に補正予算を通すために大きな判断をした。2月から3月にかけて当初予算を通すために大きな判断をした。これを今後も毎年23回と繰り返すわけにはいかない、と思います。そうすると、解は二つしかありません。一つは自民・公明に加えてどこかの政党に連立政権に新しく入ってもらうか、あるいは、もう一回どこかで自公で過半数を取りに行くための勝負をかけるしかありません。

私は参議院選挙までは連立相手を増やすということは無理だと考えていますが、もしかすると参議院選挙が終わったら、その可能性があるかもしれないと思っていますが、小林先生はどのようにご覧になられますか。

小林  当然これは高度な政治判断を伴うので、党の幹部を中心に色々と考えられていると思います。さらなる連立については、私はあまり想定していません。今仰った2つの選択肢があるとすると、どこかで解散総選挙、まあこれは大義も当然要りますし、早ければいいというものではありませんが、やはりそこでこの少数与党という状況を解消していく必要があるのではないかと思います。昨日、実はマスコミの方に連立についてどう考えているかを聞かれたのですけど、そのとき私が答えたのは、数合わせのために連立相手を増やすというのは、日本のためにいいことにならないんじゃないか、その前にまず自民党としてどういう立ち位置を確保するのかを、もう一度明確にしないといけないと話しました。数が多ければ一見、安定するように思われますが、政策の調整コストは莫大なものになると思いますし、スピード感が求められている国際社会の中で、日本がもう一度、世界の真ん中に近づいていこうとするときに、その状態では厳しいのではないかと思います。

小森  ありがとうございます。私もそういう風に感じつつあるところです。(笑)
別の質問をします。小林先生が講演で話されたように、今の野党が政権を握るようなことがあれば、日本は漂流する。私もそのように思っています。だから私たちは負けるわけにはいかないと思っていますが、他方で、今回、相当厳しい選挙になるという話をされましたし、その通りだと思います。世論調査を見ても、我々の考えが伝わっていない年代層が出来てしまっています。「これを言ったら国民が喜んでくれる」競争のような政治になりつつあり、大きな憂いを感じます。

現状では若い世代などで「自民党は国民の暮らしのことを考えてくれていないな。国民民主党の方が色々考えてくれているよね。」ということになってしまっていて、我々の考えが届いていないことに対して限界やもどかしさを強く感じます。今、永田町界隈ではSNSをどう使えばいいのかということを一生懸命やっていて、それはそれで大事なことではありますが、それは本当の解ではないだろうと思っています。

この前の総裁選挙で小林先生が勝てなかった要因の一つは「まだ早い」というような感覚があったからだと思いますが、国家公務員を十数年やられ、そのあと政治家になっても十数年やられ、もう50歳になっているのに、これでなんで早いんだと。決してそんなことはありません。あと何年かすれば小林さんも50代半ば、その時には誰から見ても若すぎるということはない、もっとどんどん時計の針を進めていかなければなりません。

改めて、私たちが今の日本、そして未来の日本について真剣に考えているということが、どうしたら伝えられるのかについて、お考えをお聞きします。

小林  たぶんその答えがわかっていたら、こんなことにはなっていないと思うのですけど・・(笑)本当に難しいと思います。私もSNSが全てだと思いませんが、やはり影響力は非常に大きいですよね。

国民民主党のような、ある意味キャッチーなメッセージに完全に自民党は負けてしまって、「財政緊縮ばかりで国民のことを全然わかっていない、税を取ることしか考えていない。」という風に思われているので、やはり発信の仕方は考える必要があると思います。ただ責任与党である以上は無責任なことは言うべきではない。それは絶対言うべきではない。

私は短期的なビジョンと中長期ビジョンの二つを分けてメッセージを発信することが重要だと思っています。総裁選などでは中長期的なビジョンが重要で、国民にしっかりと明確に示す必要があります。

さはさりながら、やはり今、中間層に相当な不満が溜まっているというのを肌で感じています。そこに対するメッセージとしては2点あります、国民民主党のようなあそこまでエッジを効かせることがいいとは思いませんが、もう少し踏み込んだメッセージの出し方というのはあるのではないかな、というのが1点。もう1点は小森先生が触れた世代交代。世代交代というのが目的になってしまってはいけないとは思いますが、先程申し上げた通り、経験、能力で判断する、フェアに判断する、当選回数は関係なく、とにかく能力のある、たとえば若手で議員の経験が少なかったとしても、そういう方をどんどん登用することだと思います。「自民党はもう変わった、変わるんだ。」というメッセージを、国民の皆様に発信していかないと、次の選挙も厳しいのではないかと思っています。

 小森  日本の政治は、戦後に遡ってみると、当選回数とポストは必ずしも関係ないですし、議員以外で色々な経験を積んでこられた方もいるので、それも含めて総合的に考えなければいけないと思います。

中長期的ビジョンに言及されました。総裁選挙が終わって「2050年のわが国のかたち・社会のあり方を考える研究会」というのが発足して、小林座長を中心にそういう勉強会ができています。また、それとは別に「チーム・コバタカ」という、総裁選の時に小林候補を応援した当選回数5期以下の人たちを中心とする集まりがあります。昨年の2050年研究会で小林先生がものすごくいい話をされて、私も感銘を受けたんですが、2050年の我が国には何が必要か、そのためには足元から今何をしなければならないかという話を、科学技術や教育など多方面からお話をされていました。バックキャストとして、こういうふうに考えるということを、最近、小林先生はよく口にされますが、いつ頃からそういう風にお考えになられました?あるいは、その着眼するきっかけとはどのようなものですか?

続けて別の質問をします。小林先生は初代の経済安全保障担当大臣です。経済安全保障というのは今や日本の政策のど真ん中にありますが、小林先生が切り開いてきた分野です。いつ頃から経済安全保障という概念について考えていましたか?

小林  最初の質問については、やはりゴールを見つめないと、物事って中々うまくいかないと、役所に勤めている時から、その時々の政治を見ていて思っていました。

目の前で選挙受けすることをポンポンやって、全体として整合性が取れていないよね、ということを結構感じていたので、政治の世界に飛び込んだ時から、そういう問題意識は常に持っていました。

もう一つのご質問、経済安保については、これは政治家になってからですね。

2012年が初当選だったのですが、その時に、日本の虎の子の先端技術がどんどん海外に流出していたのです。当時、例えば、新日鉄住金の電磁鋼板の技術がなぜか韓国のポスコに流れていて、裁判が起こるといった事例をはじめとして、技術流出に関する事案が枚挙に暇がなかったのです。そういう先端技術をどうやって守るのか、というところから始まり、ただ守ってばかりいたら守るものもなくなる、あるいは守っていた技術がいつの間にか陳腐化する、という危機感があるので、どうやって新しいもの獲得していくのか、という話をしていたのです。そうしたら、コロナが起きてマスクから半導体やいろいろなものが足りない状況になって、サプライチェーンどうするんだ?という話になった。そうすると更にサイバーセキュリティどうするんだ?伝統的なエネルギーに食糧安全保障もそうです。あるいはデータをどうやって守って利活用していくのか、国際ルールを作るために国際機関にどうやって人を送り込むのか、ということを色々と考え出して、2020年の6月くらいから、経済面から、この国民の命と暮らしを守るためにどうするか、ということを体系立てて検討し始めた、そこからですかね。

小森  ありがとうございます。私が係長で、小林先生が係員だった時から、なんとなく小林係員はすごく大きなことを考えているんだなと時々感じることがあって、20代半ばの青年がそのまま現在の総裁候補となる政治家に成長されました。でもまだまだ途上なので、私たちも全力で支えていきますので、小林先生が日本の政界の中心に立った時こそ、また日本が世界の中心に戻れる時だと思っていますので、今後とも、よろしくお願いいたします。

小林  その時、私、全然、そんな感じじゃなかったと思いますけど、もし小森係長がそのように感じられていたのなら、先見の明があり過ぎですね。(笑)

先ほどのバックキャストの話、いつからかということですね。

いつ初めて見たのか覚えてないのですが、印象的な僕の好きな絵があって、

「指月布袋画賛」という絵なんです。皆さんが見られたら、「あ、これか」と思われると思います。布袋さんが、こうやって遠くを指さしてる絵なんですよ。これをどのように解釈するか、

実は布袋さんは、絵にはないけれども多分月を指さしていて、小さな子どもが布袋さんの指先を見ている絵なのです。それを見て私が感じたのは、やはり物事というのは、指先を見るのではなく、目指すべきビジョン、姿というものを見ている必要があると・・・

それを気づかせてくれたのは、この絵なんですよ。

先ほど小森先生から、どうやったら国民の皆さんに自民党としてしっかりとしたメッセージを伝えられるかと問われましたが、中身はもちろん重要ですが、最近、特に感じるのは政治のトップリーダーの言葉の力だと思っています。同じことを国民の皆様に発信するとしても、その伝え方だと思います。例えば、政治家が官僚の方が作ってくれた文章を読んでいても心に響かないじゃないですか。政治家が自分の言葉で発信していく、直接、国民に向き合って発信していくということが、まだまだ日本では足りていないんじゃないか、逆に言えば、それをやっていけば自民党も真のメッセージを伝えることができるんじゃないかと思いますので、そういうところを意識して二人で頑張っていきたいなと思いますね。

 

小林 鷹之こばやし たかゆき

千葉県市川市出身。東京大学法学部卒業後、大蔵省(現財務省)に入省。在アメリカ合衆国日本国大使館勤務などを経て、2012年に衆議院議員初当選。これまでに防衛副大臣兼内閣府副大臣、経済安全保障担当大臣などを歴任。現在は自由民主党安全保障調査副会長。安全保障・経済政策に精通した実務派。

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